原発通信359号 2012/12/18

小出裕章さんの生き方と、東京電力原子力ムラのサラリーマン的生き方

 今日の通信では、福島第一原発事故後、マスコミやネットにたびたび登場し、意見を言われている京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんの原子力との出会い、そして学び、女川の人たちとの出会いのなかで原子力は危険、「原子力は間違い やめるしかない」と決意に至った過程を取材した東京新聞記事の紹介と、NHKTVクローズアップ現代「東京電力 瀬戸際の内部改革」(12月13日放送)で取材されている東京電力内部の検証について紹介したいと思います。

 人とは、社会とはという問題にしっかり向き合った生き方をしてきた人。一方、カネ、効率のみの世界に身を置き、無駄と思ったことを考えもせずただ足切りと称して埒外においてきた連中の生き様──対照的です。新聞にある小出さんの笑い顔と、東電幹部連中の薄ら笑い──人となりが出てくるものだとあらためて思いました。 

“なぜ私たちは原発を安全と言うようになったか”

 映画『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』(本通信322、325号で紹介)ではないですが、肝心の“なぜ私たちは原発を安全と言うようになったか”に関しては、そう目新しいものはなくというか、まあ、そんなものでしょうと想像がつく中身です。ヤラセかどうかはわかりませんが、社内のやり取り等、そして松本純一クンのテレビカメラの前ではない姿、過酷事故を想定しての漫画チックなシーンなどが出てきます。それにつけても事故で住み慣れた家を追われ、仮設等で暮らしている方々に比べ、立派な部屋での会議です。その一方で、事故対策費を削っているといいます。

 そういえば、15日の集会、デモで福島から来られたという方が、デモが東電本店前に差し掛かったとき、東電へ向け、「この一等地の本店を処分して福島へ」と訴えていました。ところで、何が「瀬戸際」なのか、存亡の危機? 使い古されています。いや、その意味でいえば、北朝鮮と同じなのかもしれません。「俺たちを潰していいのか」と…。

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▶安全性再検討に手応え 福島閣僚会議閉幕

福島民報 12月18日(火)9時24分配信

【国際原子力機関(IAEA)のデニス・フローリー事務次長は「福島の事故で得た教訓を共有し、原子力安全強化のための国際的取り組みの進展を確認することができた。原子力の安全を再確認する場となった」と】

 この記事だけでは何が何だかわかりませんが、「原子力の安全を再確認する場となった」という意味はどういう意味なのでしょうか。

▶福島新生へ提言 元福島第一原発副所長の増田さん

福島民報 12月18日(火)9時30分配信

【増田さんは京都大法学部卒。30代から50代まで東電と県をつなぐ仕事も務めた。山伏姿で「原発事故は私たちの大罪。私たちがこのような部下を育てた結果で、申し訳ございません」と深々と頭を下げた。昨年4月、低レベル放射性物質を含む水を、世話になった地元に無断で海に放出したことが許せないという】

【講演では「広島の原爆ドームのように原発を世界遺産として、『負』の遺産を『正』に換えたい。研究データがない低レベル放射線の影響、除染や品種改良の世界的な研究を福島医大、福島大で進めてほしい」と述べた】

 この人も原子力分野の人ではなく、事務方から上がってきた人なのでしょう。悔恨しすぎてもしすぎることはないとの思いなのでしょう。当然です。

▶双葉町長:町議会の辞職要求を拒否

毎日新聞 2012年12月18日 03時04分

【井戸川克隆町長は17日、辞職を求める要求書を提出した町議会に対し、「引き続き職務を全うしたい」と拒否する考えを伝えた】

▶人が集まらない 福島「収束宣言」から1年 原発作業暗転

東京新聞 2012年12月18日 07時02分

【一年前の十二月十六日、政府が突然、東京電力福島第一原発の「事故収束」を宣言した。被ばく線量が高い作業が今後増えるにもかかわらず、宣言を境に危険手当の打ち切りや給料カットが相次ぎ、作業員の待遇が悪化。最近では作業員が集まらなくなっている】

【東電が福島第一でもコスト削減に躍起になり、そのしわ寄せは下請けに行く。別の下請け会社の社長は、上位の会社から給与の引き下げを言われ、「従業員の社会保険も払えないぐらい会社はぎりぎり。これ以上下がったらやっていけない」と嘆いた】

【今後、福島第一では建屋内の被ばく線量が高い作業が増える。作業員の「五年で一〇〇ミリシーベルト」の線量限度を守るには、特定の人が被ばくしないよう、ローテーションできる人数が必要になる】

【東電は、今後は必要とされる作業員数が減り、事故後に福島第一で働く従事者登録した人が延べ約二万四千人いるとして、作業員は足りると強調する】

【福島第一で長年働いてきたベテラン作業員は、総選挙を受け「宣言後、労働環境が悪くなった。(新政権は)福島第一で働く人間のことを忘れず、収束作業が進むように現場をバックアップしてほしい」と】

 自民党政権になり、またぞろ竹中の影がちらついています。「改革なくして成長なし」のお題目で行われた「構造改革」「コスト削減」、「努力した人が報われる」──その行きついた先は…。いまさらいうこともありません。東電、福島第一原発でもコスト削減に躍起とか。削るところと、手当てしなければならないところ、彼らには区別できないでしょう。「どうせ、俺がやるんじゃない」と思っている連中がする仕事ですから。

 でも、その結果が待ち受けているものは…。その責任も今回の選挙で…に投票した人たちだけが負うのならいいのですが、そういかないところに問題があります。

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▶衆院選:脱原発勢力の結集を目指す…東海・鈴木望氏

毎日新聞 2012年12月17日 11時45分

【比例東海ブロックで復活当選した日本維新の会新人で前磐田市長の鈴木望氏(63)は17日午前、超党派の議員連盟を通じ脱原発勢力の結集を目指す考えを明らかにした。復活当選後、「脱原発をめざす首長会議」世話人の三上元(はじめ)・静岡県湖西市長から「国会でも脱原発を訴えてほしい」と電話で励まされたという】

 維新の会、さて、どこへ向かうのでしょうか。

▶衆院選:安倍政権でどうなる:原発立地自治体/普天間移設/霞が関の官僚

毎日新聞 2012年12月18日

◆上関

【上関町の柏原重海町長は17日に記者会見し、「民主党の政策はコロコロ変わったため、安定政権を望みたい。新エネルギー計画の中で上関原発がどう位置づけられるかだ」と自民政権を注視する姿勢】

【建設推進派の古泉直紀・上関町まちづくり連絡協議会事務局長は「しっかり議論した上で、安心安全な原発を造ってもらいたい」と期待】

【反対派の上関原発を建てさせない祝島島民の会の山戸孝事務局次長は「自民党の大勝と原発推進はイコールではない。民意は原発ゼロに向かっていくと思うし、そうあるべきだ」とくぎを刺した】

【山本繁太郎知事は取材に対し、建設に必要な公有水面の埋め立て免許の延長について「国のエネルギー政策の樹立には時間がかかる。方針は変わらない」と述べ、中電の申請を却下する考えを改めて示した】

◆川内

【岩切秀雄市長は、「全原発の再稼働の可否を3年以内に結論」とする自民の公約について「高い安全基準をクリアした原発は3年といわず稼働すべきだ」と期待感】

【市民団体「川内原発建設反対連絡協議会」の鳥原良子会長は「自民政権が原発を推進するのではと危惧している。新しい自民党というのであれば、原発に頼らないエネルギー政策を望んでいる住民の意見をくんでほしい」と】

◆玄海

【玄海町の岸本英雄町長も「判断が3年以上もかかれば、町は財政的にも疲弊してしまう。3年以内といわずに、すぐにでも安全を確認し再稼働してもらいたい」と切望】

【反原発団体「プルサーマルと佐賀県の100年を考える会」の野中宏樹共同代表は「原子力政策を推進してきたのが自民党。自民党は『原発ゼロ』とは一言も言っていない。3・11以前に逆戻りするのではないか」と危機感】

▶安倍総裁:「夫に届かない声拾いたい」妻・昭恵さんに聞く

毎日新聞 2012年12月17日 22時15分

【 ──原発問題についてはどう考えるか。

 福島で避難している方たちとお話ししましたが、原発がまたこうなるなら造るべきではない。日本の技術があれば(新エネルギーに)移行していけると思います。

 ──国防軍や集団的自衛権についての安倍さんの発言に不安を覚える人もいる。

 国防軍をすぐに戦争に結びつけるのは安易。ただ、不安に思う人たちの気持ちも酌んでいかなくてはいけないと思います】

 ──だそうです。「原発がまたこうなるなら造るべきではない」などと、「条件」を付けていますが、何の意味もありません。なりうるのですから。

▶記者の目・福井:一貫性に欠けた公約、理念 問われる約束の履行/福井

毎日新聞 2012年12月17日 地方版

【民主は「30年代原発稼働ゼロ」、自民は「原子力に依存しなくてもよい経済・社会の確立」を掲げた。だが、原発を抱える3区ではこれらの公約は影を潜め、両党に共通する「安全が確認された原発は稼働する」という主張が強調された。候補者らは公約の都合の良い部分を切り取り、有権者に示した】

【農業県の福井では反対が根強いTPP(環太平洋パートナーシップ協定)も同様だった。自民は公約で「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、交渉参加に反対」とし、交渉参加の余地を残したが、県内のある自民候補は「聖域なき関税撤廃でないTPPはない。TPPには断固反対するという意味だ」と踏み込んで解釈し、有権者に訴えた】

【党が掲げた理念まで否定する言動もあった。ある民主候補の応援弁士は「福井の民主党国会議員は、北陸新幹線の着工や足羽川ダムの建設継続も決めた。『コンクリートから人へ』ではなく、『コンクリートからコンクリートへ』だ」と胸を張った】

 民主党、これでは、信は得られないでしょう。民主党議員だけではありませんが、皆、バッジをつけたいだけだということです。

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▶クローズアップ現代 東京電力 瀬戸際の内部改革

NHK TV2012年12月13日(木)放送

【会社存亡の危機にある東京電力。事故を起こした組織的な要因は何だったのか。東電内部の改革チームに3か月にわたり密着。揺れる世界最大の民間電力会社の今を記録】

「今回の大きな事故を起こしてしまったことで、距離がどうかと問われれば、やはり社会との距離は大きく離れてしまった。我々が原子力事業者として、十分な組織なのか、体制ができているのか。」とは、あの松本純一の言です。

 この番組、東電も一生懸命事故をなぜ防げなかったのかと検証していますよという中身なのですが、ならばなぜ、事故当時の本店―フクイチ間で交わされたテレビ電話ビデオをすべて公開しないのかということです。プロパガンダだと思われても仕方がありません。

 しかし、原子力部門はそれほどまでに特別だったというのがわかります。

 そして、“なぜ私たちは原発を安全と言うようになったか”という中身ですが、まあ、想像の範囲内です。

【社内のほかの部署からも厳しい批判の声が上がっています。

「原子力の人たち、本当に当事者意識があるの。」

「原子力は特別だからという認識をすごくもっている。特殊だから、他からとやかく言われる筋合いないっていうこと。」】

【改革タスクフォース(原子力出身)

「(稼働率下げない)ルール通りやると、(重大事故への)安全対策の優先順位が下がる。だから、まじめに仕事すればするほど(重大事故への)安全対策は先送りになってしまう。」僕らが失敗したのは足切りできると思っていたリスクが、実は足切りできないリスクだったんだと。そこで僕らは誤った。そこは十分反省しなくちゃいけない。」】

【東京電力 原子力改革監視委員会 デイル・クライン委員長

「東電の組織は、ピラミッド構造になっていて、現場の作業員が上司に問題を指摘することが難しいのです。事故の際に、現場はできるかぎりのことをしたでしょうが、そもそも自分で判断して、適切に行動できるような仕組みにはなっていなかったのです。日本の製造業の中には、現場で問題が見つかれば工場を停止する所もあります。しかし、原発では、それができていないのです。」】

 事故発生当初からマスコミ対策で出ずっぱりだった松本純一、この番組で言っています。要は俺たちサラリーマン。上が決めてくれないとできませんというようなことを。

 しかし、こんな事故を起こしておいても、なお薄ら笑いを浮かべながら話せる神経、見上げたもんです。NHKテレビの取材、全国放送というなかでも笑みが出る──私には信じられません。このような神経を持たないと、この3万8千人もいるという東京電力のような巨大組織では出世できないのでしょう。そういう面もうかがうことができる番組です。

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▶「原子力は間違い やめるしかない」 小出裕章

東京新聞2012年12月16日付

 3.11、福島第一原発事故後に初めて小出裕章さんという方を知りました。ネットで情報を集めているなかで、小出さんお名前がたびたび出てきました。その後、本も読みました。本通信でも何度となく紹介させていただきました。

【自分がやろうとしている学問が社会の中でどういう意味を持っているのか答えるべきだというのが大学闘争の問い掛けだったと気付いた。

 自分がやろうとしている学問は原子力なわけだから、それの社会への表れ方、つまり、原子力発電がどういう意味を持っているのか答えざるを得なくなった。なぜ原発を大都会の仙台ではなく、女川という過疎地に建てるのかという答えを探し求め始めた。だが東北大工学部原子核工学科もそうですけど、原子力を推進するための教育をする場所だったので、教員は皆、原子力は良いものだという教育しかしてくれなかった。いくら聞いても、どうして仙台ではなく女川なんだということに答えられない。そうなると自分で勉強するしかないということになった。

 ちょうど当時は米国で原子力に対する科学的、専門的な問題の洗い出しが出てきた頃で、米国から入る情報を入手して勉強した。そして工学部の教員たちと論争を始め、たどり着いたのが、原子力発電には都会では引き受けることができないほどの危険を持っているが故に過疎地に押し付けるのだという結論だった。

 そう決してしまうと私としてはそんなものに人生を懸ける気はしないし、そんなものを許すこともできないと思うようになり、以降、原子力発電をやめさせなければならないという生き方をすることになった】

 1969年1月18,19日、東大安田講堂を中心とした全共闘学生と機動隊との攻防戦を大学(東北大)生協のテレビで見ていて思ったそうです。尊敬する人は田中正造。小出さんご自身もまっすぐな方と思います。そして、「無常」というものをも理解されている方だと思いました。だからこそ、「原子力は間違い やめるしかない」と。

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▶原発事故:放射線計測 立ち入り禁止域、電力会社が担当

毎日新聞 2012年12月18日 東京朝刊

【従来、敷地外のモニタリングで電力会社の果たす役割は不明確だったが、一定の濃度を超えて汚染された地域・海域について、電力会社の責任をより明確にした】

【一方、立ち入り禁止区域の外側で住民が生活している地域については、地方自治体が分担する。国は、自治体の範囲を超えた空や外洋などの広域モニタリングや、立ち入り禁止区域でのモニタリングの支援を担当する。原子力規制委員会が全体の実施計画作りやデータの評価、情報提供】

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▼どうでもいい話

▶首相指名は石原代表 維新が確認 「共同代表制」を検討

産経新聞 12月18日(火)7時55分配信

【両氏は17日午前、電話で会談し、橋下氏は「未経験だから取り違うことを言った」などと釈明】

 やはり、橋下クンはスネ夫君です。取り入ることに恥じらいなどありません。

▶連合会長“壊滅的敗北 再生へ結束を”

NHK TV12月17日 17時36分

【古賀会長は「きのうの選挙で民主党は壊滅的敗北ということになった。やはり3年半の間、ガバナンスやマネージメント、あるいは党の意志決定の問題などを確立しないまま政権運営を行い、それが内部抗争にどんどん発展して、分裂ともいうべき離党者が出た。そういう姿に有権者が厳しい評価を下したとみるべきだ」と述べました。 そのうえで古賀会長は「党の再生に向けては、一致結束した体制をどう作っていくかが鍵となる。われわれも提言すべきは提言していきたい」】

 と、人に説教できる立場かね。屁のツッパリにもならないロードークミアイ=レンゴーと言われるのがオチでしょう。自分たちの組合員・構成員の多くが自民党に投票したのです。えっ、民主党が悪かったから、俺たちのせいじゃないってか。歌を忘れたカナリヤは裏の藪に捨てましょか…。働く者を守ることを忘れた彼らは、「地獄への水先案内人」──これが彼らの新たな代名詞か。