原発通信364号 2012/12/26

今日から安倍政権です

 いったい何を考えていたんだろうという野田佳彦内閣が総辞職し、代わって安倍晋三がわが世の春と浮き足立っています。きな臭い臭いを振りまきながらの登場です。そんな時、10年前の番組をたまたま見つけました。

*『昭和ひとケタ三人衆大放談』──小沢昭一 野坂昭如 永六輔 筑紫哲也

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 10年前の話です。でも、何ら色あせていないのです。それは、なぜ…。この番組に出ている人のうちお二人がもうお亡くなりになってしまいました。さびしいものです。

▶「僕は泣いちっち」が問いかけるもの

 小沢昭一の「ハーモニカブルース」(これは反戦歌だと思っています)と「おじさんたちに歌う歌はない」が好きなのです。歌ついでにいえば、守屋浩の「僕は泣いちっち」(1959年)という歌が、なぜかふと口ずさむ時があるのです。愛唱歌とでもいうのでしょうか。そのことを書いた記事(下記)が、最近ありました。作詞・作曲は浜口庫之助さんです。

 東京が遠く、憧れの地──夢と希望、そして花の都だった頃の歌です。「どうして どうして東京がそんなにいいんだろ」と。「僕も行こう あの子の住んでいる東京へ」と続きます。あれから東京を歌った歌は、汽車から電車にと変わりましたが、私の記憶ではマイペースの「東京」(1974年)以後、「東京」は歌われなくなっていったと思います。「ああ上野駅」(1964年)も、日本がそんな駆け足で走っていた時代の歌でした。

 東京をめざした多くの若者たちいました。そのため、経済成長からも取り残され、「故郷」は過疎化が進み、そのためある地域では「電源三法」にすがる状況を生んでいったのです。そう、そして原発が54基もでき、その原発事故で故郷を追われた16万もの人、放射線の恐怖にさいなまれる多くの人々を生み出してしまったのです。そんなことを思い起こさせる歌です。

 浜口さんは、自著で次のように言っているそうです。

【浜口さんは自伝「ハマクラの音楽いろいろ」(朝日新聞社)でこう書いている。

<都会の過密化が社会問題になっていた。都会ばかりに人が集まり、地方の過疎化が目立ってきた。僕は、みなが都会をめざすなかで、残された人たちのことを思った>】と。

【後年、浜口さんは叙勲の打診があったが、辞退している。その心持ちを同書でこう言い表す。 <ここで勲章を受けたりしたら、いままで僕がやってきたことは、何だったのか、ということになる。僕は、あくまで大衆のために歌を作り続けてきたのだ> 90年12月2日、73歳で死去し今月で22年】だそうです。蛇足ながら、今年、喜んで文化勲章をもらった映画監督がいました。

 安倍政権の誕生と原発のことを考えていたら、ふと、これらの歌を口ずさんでいたのです。ちょっとセンチメンタルな歌です。年の瀬なのでしょうか。

*火論:「泣いちっち」再び=玉木研二

毎日新聞 2012年12月04日 東京朝刊


▶放射性物質の除去装置、稼働めどたたず 福島第一原発

朝日新聞デジタル 12月26日(水)5時39分配信

 昨日の本通信で紹介した記事「福島第1原発事故 冷温停止状態宣言から1年 廃炉の道のり遠く 東京電力・小森明生常務に聞く」のなかに出てきた、なんでも汚染水から62種類の放射性物質を除去する「多核種除去装置『アルプス』」と称する装置のことのようです。さて、小森常務、いっそのこと、ムラのセンセイを総動員して「ダイジョウブ合唱団」を結成し「海に戻し」ちゃいましょうか。

【「多核種除去装置」から出る廃棄物を保管する容器の強度が足りないことを、政府と東電の廃炉に関する中長期対策会議で明らかにした。補強して確認するのに時間がかかり、装置の稼働のめどがたたない】

【容器は放射性物質がたまると交換する。交換の際に落下しても、内容物が漏れ出さない強度が必要だ。東電は6メートルの高さからまっすぐに落としても漏れがないと確かめたが、逆さまで高さ3メートルから落とした場合などに容器の一部が壊れ、内容物が漏れると】


▶自公連立合意:原発政策、残る溝…再稼働であつれきも

毎日新聞 2012年12月25日 21時43分(最終更新 12月26日 00時46分)

【自公間でズレが目立つエネルギー政策では、将来の原発のあり方について「可能な限り原発依存度を減らす」との表現にとどまった。原発の新増設に含みを持たせ、一定程度の原発維持を模索する自民と、早期の原発ゼロを主張する公明の隔たりは残ったまま】

 そんなことより、大臣の椅子を選択したということです。

▶自公連立合意:TPP、日米関係考慮し反対色薄める

毎日新聞 2012年12月25日 21時26分(最終更新 12月26日 00時44分)

【環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉参加について、自民、公明両党は衆院選では慎重姿勢を取っていた。一方、25日の自公連立政権合意は「国益にかなう最善の道を求める」と、推進、慎重のどちらともとれる表現を選んだ。安倍晋三総裁は日米同盟強化を重視しており、来年1月の実現を目指す日米首脳会談をにらみ、反対論を薄めたとみられる】

 しかし、こんなふうに進められるはずはありません。「聖域なしの市場開放」を求めてくるのは目に見えているのですから。


▶自、改憲トーンダウン 公、原発ゼロ明記なし ズレ隠し、あいまい決着

東京新聞2012年12月26日 朝刊

【自民党は当初、改憲の発議要件を緩和する九六条改正を連立合意に盛り込む構えをみせた。これに公明党が激しく反発。「憲法審査会の審議を促進し、改正に向けた国民的な議論を深める」との文言でまとまった。

 もっとも、自民党内では、来夏の参院選で勢力を拡大した上で、改憲への動きを加速させたいとの意見が強い。当面は本音を隠した合意といえる】

▶安倍総裁:党2役に女性…刷新イメージ打ち出す

毎日新聞 2012年12月26日 00時07分(最終更新 12月26日 00時58分)

【安倍氏は早くから党三役への女性の起用を構想していた。伏線として、衆院選では「2020年までにすべての分野で3割、女性が指導的な立場に立てるような社会をつくる」と繰り返し訴えた。しかも、石破、高市、野田3氏はいずれも無派閥】

 昨夜のニュースで、自民党の高市早苗は原発再稼働を聞かれ、「この寒波でご苦労されている方も」などとさも原発が動いていないことで苦労している人が…という感じで話していました。事実を歪曲して平気でしゃべれる人です。

 しかし、女性議員の比率でいえば世界で下から勘定した方が速い情けない国です。安倍にしてみれば、これで好感度アップを狙ったのでしょうが。

▶経団連:米倉会長 安倍総裁の経済政策への批判を撤回

毎日新聞 2012年12月25日 20時16分(最終更新 12月25日 20時34分)

【自民党の安倍晋三総裁が日銀への金融緩和圧力を強めていることについて「何も心配することはない」と述べ、「無鉄砲」などと批判していた従来の見解を撤回】

 ということは、今まで自分が言ってきたことは何にも根拠がある話ではないということです。情けないというか、「お前は誰のお陰で商売できていると思っているんだ」という“勢い”の方が今回の勝負では分があったということなのでしょう。


▶三菱電機過大請求:防衛装備、特定企業に依存構造

毎日新聞 2012年12月25日 22時52分(最終更新 12月25日 22時53分)

 この事件だって、原発に通じる問題が横たわっています。

【背景には、防衛装備品が防衛省と共に開発した企業や外国企業からライセンスを取得した企業以外が生産するのは難しいという事情がある】

 「防衛装備品」を「原発」に、「防衛省」を「経産省(通産省、文部省等)」に置き換えればそのまま通用する世界です。だから「原子力マフィア」なのです。

▶日立製作所:火力発電分野、GEとの協業解消へ…中西社長

毎日新聞 2012年12月25日 20時19分(最終更新 12月26日 00時26分)

【日立製作所の中西宏明社長は25日、毎日新聞などのインタビューに応じ、三菱重工業との発電関連事業の統合により、米ゼネラル・エレクトリック(GE)との間で結んでいた火力発電分野の協業関係を将来的に解消するとの方針を明らかにした。一方、GEとの原子力発電事業の提携は継続するとの考えを示した】

【日立とGEは原発分野でも事業統合している。中西社長は「GEとの関係を発展させていくことが必須。今後も継続してやっていく」と述べた】

【原発事業では三菱重工は仏アレバと提携しており、アレバとGEは競合関係にある。一方で日立と三菱重工は将来的に原発事業の統合を検討する可能性も示唆しており、両社の今回の事業統合が世界の重電事業の勢力図を大きく変える可能性も出ている】

 世界の原子力マフィアになりたいと、いまだ目が覚めず「夢」を追っているのでしょう。


▶つり天井:不適切4709施設、7割は対策未実施

毎日新聞 2012年12月26日 07時19分

 昨夜の報道ステーションで、上向きにドリルで穴をあけることの不自然さと、接着剤そのものが穴から垂れてしまい役に立たない実験をしていました。本通信に、私たちは重力のある世界に生きていることを忘れ(?)、そのような設計・施工思想が理解できないと書きましたが、まさにそのことを裏付ける話。もっとひどいのは、当時は列島改造論の時代で、どんどん行けという風潮のなかでの工事だったという“恐い”話もありました。原発だって、その思想から無縁ではありません。そのころから始まってきたのですから、54基になる始まりは。

▶海江田民主代表:得意の漢詩を披露

毎日新聞 2012年12月25日 22時33分(最終更新 12月25日 22時49分)

 海江田新代表、漢詩が趣味とか。どうでもいいのですが、原発再稼働容認派・原子力マフィアにつながる連中を、「漢詩」より「監視」してほしいものですが、ないものねだりでしょうね。なんせ、日立労組出身の大畠章宏を代表代行に据えるんですから。

▶「黒川レポート」日米評価格差に愕然(1/2)

月刊FACTA 2012/12/26 12:48

【「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会法」に基づき、国会に設置されながらも、報告書が国会で議論されることもなければ、委員長の黒川清氏が国会に呼ばれ、その内容を説明し、議論されることもなかった】

【報告書の冒頭は、次の一行で始まっている。「福島原子力発電所事故は終わっていない」と。 しかし、皮肉なことに、この言葉を真摯に受け止め、福島第一原発事故に切実な危機感を抱いているのは、日本の国会でも国会議員でもない。1863年に米国政府の学術機関として発足した全米科学アカデミー。今回、同アカデミーが米連邦議会から福島原発事故の調査依頼を受け、独立調査委員会を設置、その委員会による公聴会が11月26日に開催されたのである】

【報告書は9月に英訳され、事故調のホームページから自由にダウンロードできる。それは「黒川レポート」と呼ばれ、米国だけではなく、原発を保有する国々で高い評価を得ていた】

【参加者の多くが黒川氏に聞きたがったのは、報告書に指摘した「マインドセット」の問題だった。「思い込み」と訳されたこの言葉は、報告書を読み解く重要なキーワードの一つである】

【一方で、日本の政治家と政府は、核不拡散の問題や使用済み核燃料の問題など、原子力発電所を持つ国としての責任を放棄するかのような「原発ゼロ」政策を口にし、メディアは無批判で報ずる。いずれも当事者意識を欠いている】
【黒川氏が報告書で訴えたかったもう一つの論点は、責任回避を最優先し、責任の所在が不明朗な組織、制度が、この国に蔓延している点でもあった】

 そしてこの記事は、最後に外務省職員のトンデモ発言で結んでいます。

【黒川氏のもとへ、その出席打診に訪れた外務官僚は、悪びれることもなく「この報告書はいつ出たんですか」と尋ねた】

 自分のシマの話以外は興味関心どころか、知る気もないという。これも縦割りの…。


第24回 

スウェーデンの電力会社Vattenfallが

ドイツ政府に対して、脱原発法によってこうむる損害賠償を要求

「FR」紙2012年12月22、23日付に次のような記事が記載されてあります。以下は要約です。 

 スウェーデンの電力会社Vattenfallが、ドイツ政府に対して、脱原発法によってこうむる損害賠償を要求したことが伝えられています。賠償 額は3.7Md(30.7億ユーロ)です。この電力会社が建設した2基の原発(Krümmelと Brunsbüttelにある)は、昨年から稼動 停止したままで、その後の脱原発法によって原発事業がドイツ国内で成り立たないことがはっきりし、今回の損害賠償に踏み切ったものです。

 この背景には、1994年にドイツが協定を結んだ「エネルギー憲章」というものがあります。これは、政治的な決定によって、外国企業が財産の強 制没収というような状態に陥った際には訴えるができるという内容で、これを盾に、 Vattenfall社が、「投資紛争国際示談センター」というところに損害賠償を訴えました。専門家の意見でも、勝算は十分にあるとみています。

 これに対応して、ドイツの電力会社RWEとEonが、同じく脱原発からの経済補償を求めて連邦憲法裁判所に訴訟を起こしました。しかし、外国企業に比べて勝算はないと見られています。

今後このような訴訟は増えてくるように思われます。

 では、皆さん、脱原発に向け良いお年をお迎えください。